先天性心疾患

はじめに

生まれつきの心臓の病気を先天性心疾患とよびます。先天性心疾患のお子さんは、おおよそ100人に1人の割合で生まれます。先天性心疾患には非常に多くの種類があり、生まれて直ぐに手術を行わなければならない病気がある一方で、一生にわたってほぼ症状がなく、経過をみるだけでよいものもあります。

代表的な先天性心疾患

私たちの心臓には、血液を循環させて、全身に酸素や栄養を届ける働きがあります。このため、心臓には4つの部屋があり、体に酸素を運び終えて心臓に戻ってきた血液を肺へ送るルート、肺で酸素を受け取った血液を全身に送り出すルートの2つがあります。これらのルートを隔てる壁に穴があいていたり、それぞれのルートを作る部屋や血管がなかったり、血管はあっても正しくつながっていない場合などには、先天性心疾患となります。また、複数の先天性心疾患を同時にもっていることもあります。代表的な先天性心疾患としては、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症、大血管転位症、単心室症、左心低形成症候群などがあります。

外科治療について

現在の医療はチームによって行われています。小児循環器科医、心臓血管外科医、麻酔科医などの医師、看護師、臨床工学士などの多職種が連携して治療にあたります。心臓の様子は一人一人違いますので、病名は同じであってもその症状は様々ですし、お子さんごとに治療の時期や方法も異なります。したがって、治療チームでは、それぞれの病態をふまえて、治療方法を十分に検討します。その結果は、ご家族に(年齢によってはご本人にも)詳しく説明いたします。

心臓の中にメスを入れる手術では、人工心肺装置とよばれる、一時的に心臓と肺の代わりをしてくれる機械を使用します(開心術)。一方、疾患によっては人工心肺装置を使用せずに手術をすることもあります(非開心術)。当院では体重1,400g台のお子さんに対する人工心肺装置を用いた手術の経験があり、非開心術である動脈管開存手術では400g台の未熟児の治療実績があります。比較的軽症な疾患に対しては無輸血手術や小切開手術も取り入れていますが、あくまで安全性を重視しており、一時の流行にとらわれない姿勢で臨んでいます。したがって、体重が小さいなどの理由で人工心肺装置を用いた根治的手術の危険性が高いと判断された場合には、人工心肺を用いない一時しのぎの手術を行い、体重増加を待ってから再手術を行うこともあります。なお、単心室症などの複雑な病気では、段階的な治療を行いますので、フォンタン手術とよばれる最終手術までに複数回の手術が必要となります。

成人先天性心疾患

先天性心疾患は、かつては子どもの病気と考えられてきました。しかし、様々な治療法の進歩により9割以上の患者さんが成人期に達することができるようになった現在では、成人の先天性心疾患の患者さんが抱える問題への取り組みも大変重要となっています。
たとえば、小児期に手術を終えた患者さんであっても、その後の長期にわたる経過観察が必要なこともあります。特に、成長しない人工物を使用した場合や、心臓に残った病変がある場合などには、成人になってから再手術が必要となることもあります。また、疾患によっては、長い年月を経てから心不全や不整脈が出現することもありますし、女性では妊娠、出産などに特別な配慮を要することもあります。つまり、先天性心疾患の患者さんの一生を見据えた治療が求められる時代になってきています。当院では、小児科や内科と連携して診療にあたっておりますので、成人先天性心疾患につきましても何なりとご相談ください。

おわりに

先天性心疾患の治療を行う施設は全国的にも極めて限られており、必ずしも全ての大学病院が先天性心疾患の診療部門をもっているわけではありません。当院は山梨県内唯一の施設として県内の各医療機関と連携して診療を行っておりますが、何らかの理由で緊急対応ができない場合に備えて、長野県内唯一の施設である長野県立こども病院と相互協力の協定を結ぶなど、県を越えた広域連携もとっています。
先天性心疾患では、病態や重症度が様々であるため、個々の患者さんにあった最適な治療法を選択することがとても重要です。私たちは、今後とも病院をあげて最新かつ安全な医療の提供に努めてまいります。