肺がん・縦隔腫瘍

当科の特徴

なんらかの症状で病院を受診して、あるいは人間ドックを受けて、病気が見つかることがあります。それが手術できる病気の場合、患者さんにとって体にメスを入れる行為に対して不安があるかと思います。傷をつける行為に対して不安、恐怖を感じることは当然です。当科ではそのような患者さんの不安、負担をなるべく減らすべく、傷を小さくする低侵襲手術に取り組んでいます。主な取り組みとして胸腔鏡というカメラを用いた小さな傷で行う手術があります。従来10~20㎝程度の傷で行っていた手術を1㎝前後の傷3~4ヶ所で行う手術です。病状の進行などにも制限されることもありますが、現在当科では7割程度がこの胸腔鏡による手術が行われています。

取り扱う疾患

肺がん

肺に発生するがんで、現在、日本人において悪性腫瘍の中で死因第一位となっています。タバコが原因としてよく知られていますが、最近はタバコを吸わない方の肺癌も増えてきています。CTという検査法の進歩により早期に肺がんが発見されることも増えてきています。肺がんの治療は手術と放射線治療と抗がん剤治療があります。転移がない場合は、手術が行われることが多いです。さらにリンパ節転移のない3㎝以下の早期の肺がんにおいては、右図のように胸腔鏡下手術を行っています。これは、手術に際して胸につける傷を小さくし、その結果術後の痛みや呼吸機能の落ち込みを減らす方法です。われわれは基本的に、1cmの孔2から3か所と、肺を取り出すための約3cmの創1か所で、標準手術(肺葉切除+リンパ節郭清)を行っています。

転移性肺腫瘍

肺は他の臓器に発生したがんが転移しやすい臓器です。消化器(大腸、胃など)、腎臓、骨、子宮等から発生したがんが肺に転移することがあります。肺に転移した場合でも、それを切除することで余命を伸ばすことが可能になりました。しかし、それでも手術適応にはいくつかの条件が必要となります。

縦隔(じゅうかく)腫瘍

左右の肺の間にある首からお腹までの空間のことを縦隔といいます。ここにできる腫瘍は術前に診断をつけることが困難です。画像で増大を認める場合は診断と治療を兼ねて手術を行うことがあります。

最も多い腫瘍は縦郭の前の方にできる胸腺腫です。胸腺腫の場合従来は胸骨正中切開という方法で骨を切って手術していましたが、最近では、胸腔鏡下手術を行っています。

気胸

肺に穴が開くことで空気が胸の中に漏れ、肺がしぼんでしまう病気です。やせ形の若い男性、タバコを多く吸っていた高齢者に多くみられます。子宮内膜が胸の中にできる異所性子宮内膜症という病気の症状として女性に起こることもあります。気胸に関しては、ほとんどすべての症例で胸腔鏡を使用して手術を行っています。