大血管

大動脈疾患について

大動脈瘤は通常症状を自覚することはなく、偶然診断されることが多い疾患です。しかし、大動脈瘤が破裂した場合や急性大動脈解離が発症した場合は、生命にかかわります。大動脈疾患に対する治療法は、人工血管を用いた従来から行われている大動脈置換術と、技術の発達によりステントグラフト内挿術という、患者さんへの負担が少ない治療法があります。当院の方針として、受診された患者さんやご家族のかたにとって一番適していると思われる治療方法を検討し、十分御理解を頂いた上で治療を行いたいと考えています。また、大動脈疾患は、破裂など救命のため緊急手術が必要なことがあります。そのため、当院では、24時間緊急対応ができる体制をとっています。

大動脈瘤

大動脈瘤の原因として、血管炎、細胞外基質の異常、動脈硬化症などがあげられていますが、ほとんどは、動脈硬化症によるものです。動脈硬化症を悪化させる条件としては、喫煙や糖尿病、高血圧などの生活習慣病が考えられ、それらに罹られている患者さんは年々増加傾向にあります。そのため大動脈瘤を罹患されるかたも増加しています。

現在まで、大動脈瘤は飲み薬で治療することはできませんので、外科的な治療が必要です。 手術の適応は、大動脈瘤の径、年齢、全身状態などを判断して決定することになります。瘤の大きさが、まだ小さい場合は手術を行わず保存的に経過観察することになります。この場合、定期的にCT検査を行い、瘤の大きさを評価していくことになります。

現在まで、大動脈瘤は飲み薬で治療することはできませんので、外科的な治療が必要です。 手術の適応は、大動脈瘤の径、年齢、全身状態などを判断して決定することになります。瘤の大きさが、まだ小さい場合は手術を行わず保存的に経過観察することになります。この場合、定期的にCT検査を行い、瘤の大きさを評価していくことになります。

大動脈瘤に対する治療法

人工血管置換術

人工血管置換術は、胸部大動脈瘤に対しては、胸骨正中切開または、左の胸部を肋骨にそって切開を行い、大動脈瘤を露出し、瘤を人工血管で置き換えます。また、腹部大動脈瘤では腹部の正中を切開し手術を行います。人工血管を吻合している間、血流を一時的に遮断するため、特に胸部の瘤では場所により脳や肝臓、腸管へ血流を確保する必要があります。そのため人工心肺装置を用いてさまざまな臓器を上手に保護しながら手術を行います。腎動脈より足側にある動脈瘤では腹部の正中を切開し動脈を遮断し人工血管で置換します。

腹部大動脈瘤人工血管置換術

図は腹部大動脈瘤(図上のCT画像)に対する、開腹手術での人工血管置換置換手術です。胸部の手術では人工心肺を使用しますが、腹部では単純遮断のみで手術を行います。

手術により破裂の予防が期待しえます。主な合併症としては出血、感染、血栓塞栓症、腸閉塞などが知られています。

ステントグラフト内挿術

人工血管置換術以外の方法として、ステントグラフト内挿術という方法があります。血管に細い管(カテーテル)を挿入して人工血管を動脈瘤内に留置する方法です。ステントグラフトによる治療は、胸や腹部を大きく切開せず、手術時間を短くすることができるので身体にかかる負担が少なくできます。ステントグラフトは,人工血管にステントといわれる金属を縫い付けた管で、これをカテーテルの中に折りたたんだ状態で使用します。鼠径部を数cm切開して大腿動脈からカテーテルを挿入し、動脈瘤の部位まで運んだところで収納したステントグラフトを広げ、動脈に圧着させます。 大動脈瘤は切除されず残りますが、瘤はステントグラフトにより内側より圧着されることにより瘤へ直接血流が無くなり、拡大を防止することで破裂の危険性がなくなります。

腹部大動脈瘤、ステント内挿術

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術前後のCT画像です。

血管内にステントグラフトが留置されています。破裂を予防する効果がありますが、定期的なCTによる経過観察が必要です。瘤内への血流が残存した場合はカテーテルによる追加治療を必要とします。(endleak(エンドリーク))

大動脈解離

急性大動脈解離とは、大動脈の壁に亀裂がおこり、血液が進入して、大動脈の壁が2枚に裂けた状態をいいます。一度、大動脈解離が起こり大動脈壁の裂けた部分に血液が流入すると、多くの場合、瞬時に胸部から腹部大動脈にわたる広範囲にわたって動脈が裂けてしまいます。多くの人は、自覚症状として胸部や背部の痛みで発症します。頭部の血管へ血流が障害される場合は意識障害や片麻痺、下肢の血流が障害される場合は下肢の疼痛も起こります。また、腹部の分枝が障害された場合は、その末梢にあたる臓器障害を生じます。大動脈解離の発症直後は、血管の状態が非常に不安定で、破裂や心臓へ解離が進展する危険がありあります。この発症から2週間までの危険な時期を急性期とよばれています。

大動脈解離の分類

心臓の出口の部分にあたる上行大動脈にまで解離が及んでいる場合をStanfordスタンフォード A型とよび、生命にかかわる合併症がおこる可能性が高いため、緊急手術が必要です。また、上行大動脈に解離を認めず、胸部下行大動脈から遠位に解離を認めるStanfordスタンフォード B型は、発症直後は、手術を行わず、集中治療室で厳重な血圧コントロールを行います。Stanford B型であっても、解離が上行大動脈に進展したり、急激に動脈径が拡大する場合は緊急手術が必要となります。また、発症から十分な時間が経ち、慢性期になった慢性大動脈解離の患者さんは、外来で厳重に降圧療法を行い、大動脈瘤と同様、定期的にCT検査を行い、解離した大動脈の径を観察していきます。動脈径が一定の大きさを超える場合は、破裂の危険が高いため手術を考慮します。

スタンフォードA型大動脈解離、3D-CT画像

Stanford A型の急性大動脈解離、CT画像です。図左側の写真では上行大動脈(心臓近く)からほぼ全長にわたって大動脈が解離していることが見てとれます。

右下図は上行大動脈を人工血管へ置換した手術後のCT画像です。